ハナカジ コラム

【基本のステップで解説】花の生け方|切り花を長持ちさせるコツや、上手に生ける方法は?

花の生け方 画像

季節を彩るきれいな切り花。飾ることで家の中が華やいだり、目に入るだけでふとリラックスできたりと、心に豊かさをもたらしてくれるお花をできるだけ長く楽しみたいですよね。

そのためには、まずお花についての基本的な知識を知っておくことが大切です。

今回は、切り花の正しい生け方から花を長持ちさせるコツまで詳しくご紹介します。ぜひ参考にしてくださいね。

切り花を長持ちさせる方法

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皆さんは、せっかく切り花を買ってきたのに、すぐに傷んでしまったり、気がついたら枯れていたりして思うように楽しめなかった…という経験はありませんか?

切り花を長く楽しむためには、花を生ける前の下処理や、飾ったあとのお手入れが大切です。特に下処理は大切な作業。しっかり行うことで、花がすぐに枯れてしまったり、花びらや葉が落ちやすくなったりすることを防げますよ。

今回は、切り花の下処理の基本や、飾ったお花を長持ちさせるコツ、初心者さんでも上手に花を飾れる方法をプロのお花屋さんが解説します。

STEP1:余分な葉や蕾を落とす

切り花には葉やつぼみがついていることが多いですが、余分な葉やつぼみがついたままではそちらに栄養が吸収されてしまい、メインの花に栄養が行き渡らなくなってしまいます。葉が多すぎると、花瓶のなかで蒸れてしまい、雑菌が増える原因にもつながります。

まずは、茎の下半分についている葉やつぼみを全て取り除きましょう。水に浸かってしまう葉と、花瓶のなかに入る葉はすべて取り除いておくと安心です。

手でむしり取ると茎の表皮を剥がしてしまい、茎が折れて傷んでしまうことがあるので、必ず清潔なハサミやナイフを使って取り除いてくださいね。

STEP2:水揚げをする

買ってきたばかりの花には、まず「水揚げ」という処理をします。「水揚げ」とは、切り花の茎を新しく切り、しっかり水を吸わせる作業のことです。正しく水揚げをすれば花持ちが断然よくなりますよ。水揚げは、「①水切り」と「②深水」という手順で行います。

①水切り

水切りとは、茎を切ると同時に花に水を吸い上げさせる作業のことです。水切りは流水では効果がありません。洗面器やタライなどの大きめの器にたっぷり水を張って行いましょう。茎の切り口がきれいな状態を保つためには、花瓶に生けて飾ったあとも定期的に水切りをするのが理想です。

水切りはお手入れの基本となるので、しっかりとおさえておきたいところ。手順は以下の通りです。

  1. 1.清潔で切れ味のいいハサミを用意します。切れ味の悪いハサミを使うと茎が押し潰されてしまい、吸水の妨げになるので注意してくださいね。
  2. 2.洗面器などに深めに水を張ります。水に茎をつけ、水中で水切りをする位置を決めましょう。下から3cmほどの位置か、もしくは傷んだ箇所から3cmほど上の位置を目安に、茎の断面が斜めになるようにカットします。茎を水につけた状態でカットすることで、茎を切った瞬間に雑菌が付着することも避けられます。
  3. 3.茎をカットした瞬間から花は水を吸い始めるので、そのまましばらく茎を水に浸けておきます。
    1. ②深水

      水切りが終わったら、深めに水を入れた花瓶に移し替えて静かに1時間ほど水を吸わせます。深めに水を入れた容器に花を浸けることで、浸透圧をかけてさらに花に水を吸わせるのです。この作業を「深水」と呼びます。

      花を包んだ紙などをつけたまま長い時間放置すると、花が蒸れて傷んでしまうことがあります。深水の作業では長時間放置せず、1時間ほどで終わらせましょう。

      「水切り」と「深水」でほとんどの花は水揚げできます。買ってきたあとの花がしっかり水を吸収してふたたび元気を取り戻し、イキイキと元気な状態に戻ります。切り花の下処理が終わったら、道具を用意して実際に花を生ける準備をしていきましょう。

      STEP3:花瓶を用意する

      花瓶は、飾る花に合う口の広さや大きさを意識して用意しましょう。口径が8cmくらいのフラワーベースであれば、花数が少なくてもラクにまとめられるのでおすすめです。口径が広いものは、ある程度の花数がないと花がばらけてしまうので、まとめるのが難しくなります。

      最初に購入する花瓶は、高さ25cm前後のもの、12cm前後のもの、7cm前後の背の低いものといったように3種類ほどあれば便利です。高価なものでなくても構いません。日常に花を取り入れる感覚で花瓶を選んでみてくださいね。

      ガラス製の花瓶であれば、水の減り具合や水替えのタイミングが分かりやすいのでおすすめですよ。また、ボトル型やピッチャー型、四角い形の花瓶は、角に引っ掛けるように生けたり、対角線上に生けることができるので初心者でもバランスが取りやすく、上手に花を生けられます。

      花瓶といえば丸いものを思い浮かべますが、形にとらわれずに生けやすいものを選んでみましょう。

      飾った後の花を長持ちさせるコツ

      お花を飾ったあとも、こまめなお手入れを欠かさないことで花を長く楽しめます。花を長持ちさせるには、以下の点に気をつけてくださいね。

      飾る花によって水の量を変えよう

      花の種類によって、花瓶の水の量は調節しましょう。基本的には、花瓶の半分程度の水を入れておけば大丈夫です。

      ただし、茎が柔らかく傷みやすいチューリップやガーベラなどは、水に浸かる部分を少なくするのがポイント。2〜3cm程度の水が張っていれば問題ありません。

      反対に、茎が硬く丈夫な枝ものやアジサイなどは、花器の8割くらい水を入れるといいでしょう。そうすることで、硬い茎からもしっかりと水を吸い上げてくれます。

      切り花の水はこまめに替えよう

      切り花を飾ったあとは、基本的には花瓶の水は毎日入れ替えましょう。花瓶の水を変えずに長い時間放置してしまうと、雑菌が増えて花が痛み、枯れる原因につながります。

      水替えのときには花や茎の状態も確認するのがポイントです。水に浸かっていた花茎にぬめりがついている場合はしっかりと流水で洗い流し、茎が少し柔らかくなっている場合は水切りしてやりましょう。単に水を替えるだけではなく、「水を清潔に保つ」という意識が大切です。

      水の取り替えは、朝起きてすぐのルーティーンとして取り入れるのがおすすめですよ。洗面所へ向かうついでに、花瓶の水もきれいに入れ替えてやりましょう。

      毎日の水替えが難しい方は、花持ちのいいお花を選んだり、切り花が長持ちする栄養剤などを使うのがおすすめです。アンスリウムや枝もの、もともとドライな風合いのネイティブフラワーなどの枝が丈夫な花材を選べば、手間をかけずに長持ちさせられます。

      花が傷む前に切り戻しをする

      長時間水に浸かっている花茎は、時間の経過とともに自然に傷んでいきます。花を買ってきた日から3日間ほどは長めの丈を生かして飾れますが、その後は、花茎が傷んでしまう前に先端から1〜2cmを目安にして切り戻しを行いましょう。この時も、花を飾る前に行った水切りと同じように茎の切り口を斜めにカットしてやります。

      茎が傷んで状態が悪くなると、花が茎から水分を吸い上げられなくなり、水分不足になってしまいます。切り口をきれいに保ち、いつも新鮮にしておくことで水をしっかり吸収して元気な花姿を長く保つことができますよ。

      水切りを繰り返せば、花は徐々に短くなっていきます。花の長さに応じて、小さな花瓶やガラスカップに移し替えていきましょう。そうすることで、最後まで花を楽しめます。

      花バサミや花瓶も清潔に保とう

      ハサミや花瓶など、花を飾るために使う道具も清潔に保つのが大切です。汚れていたり、錆びて切りにくくなったハサミは、茎の切り口から雑菌が侵入する原因にもなってしまいます。花瓶が汚れていると、雑菌が繁殖しやすくなり、ぬめりが発生する原因にもつながります。

      ハサミや花瓶を使ったあとは、台所用などの中性洗剤できれいに洗って乾かしましょう。特に、暑さで水が腐りやすい夏場の季節は、水を変えるたびに花瓶を洗剤でしっかりと洗うのが理想です。スポンジが通らない口が細い一輪挿しなどの花器は、酸素系漂白剤などを用いて殺菌しましょう。

      栄養剤や鮮度保持剤を上手に使おう

      切り花を長持ちさせるには、「美ターナル」「クリザール」などの専用の栄養剤や鮮度保持剤などを使うのもおすすめです。

      これらは糖分や殺菌剤が主成分となったもので、切り花に必要な栄養を補給してくれたり、水を濁らせないための成分が含まれていたりと、花を元気に咲かせるためにはとても便利なアイテム。

      ボトルタイプを1本持っていれば、水替えの手間も減り、切り花も長持ちするので何かと重宝しますよ。水に薄めて使用する場合が多いので、正しく希釈して使うようにしましょう。

      初心者でも大丈夫!黄金バランスでおしゃれに飾ろう

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      切り花の下処理が終わったら、実際にお花を生けていきましょう。飾ったあとに「なんだかバランスが悪いな」と感じる原因は、花と花瓶のバランスが合っていないからかもしれません。

      花瓶から出た花が長すぎると間延びして見えてしまい、重心も上がるので不安定な印象に。反対に短すぎると窮屈そうでアンバランスになってしまいます。ひと言で花瓶に合わせて茎をカットすると言ってもどのようにカットすればいいのかわからず迷ってしまいますよね。

      花瓶と切り花のバランスは、基本の比率を意識することでどんな方でも上手に生けられます。花瓶の形や花の本数が変わっても、基本の比率は同じでOK!

      もちろんレベルが上がればさまざまな飾り方に挑戦できますが、まずは基本の3つの比率の使い分けを覚えて、徐々に花を飾ることに慣れていきましょう。

      基本のバランスは【花材1:花瓶1】

      花が美しく見える一番基本のバランスは、花材と花瓶が1:1の比率になるように飾ることです。つまり、花瓶の長さと花瓶から出ている花の長さが同じ長さにするということ。花の長さを調整するときは、花瓶の長さの2倍を目安にカットしましょう。

      バラなどの大きい花は、高い位置に置かず、あえて少し短めに切り、重心を下げると安定します。さらに、先の細い葉ものなどを1:1の長さで切って生ければバランスが整いますよ。

      また、ひとつの花瓶の中にいくつか花を飾るときは、全て1:1の比率にするのではなく、差をつけてカットするのがポイント。こうすれば、こなれて飾れます。

      上から見て三角形になるように高低差をつけると、全体的にまとまりがありながら、それぞれの花の存在感を生かしてバランスよく飾れます。穂先の長い花は、穂先を頂点にして三角形をつくるように他の花材を配置すると上手にまとめられます。

      枝ものは【花材2:花瓶1】

      背の高い花瓶に、すらっとした長さのある枝ものを生けるときは、花材2:花瓶1のバランスで飾りましょう。枝ものが花瓶の2倍の長さになるようにカットします。細く長くのびる花材は、重心が上がりにくいので大きく大胆に飾れます。

      枝葉にボリュームがあって横に広がるものは、重みで花瓶が倒れてしまわないようにどっしりと安定感のある花瓶を選ぶのがおすすめです。

      大きな枝ものは、枝の広がりによって空間をダイナミックに感じさせてくれます。枝ものは、色鮮やかなお花とはまた違ったナチュラルな存在感が魅力です。ぜひ挑戦してみてくださいね。

      小さなアレンジは【花材0.5:花瓶1】

      高さが10cm以下の小さな花器に花材を飾るときは、花材0.5:花瓶1の比率で飾りましょう。花自体にボリュームと重みのある花材を使うときは、茎を短くカットして重心を下げ、全体的に低めを意識して飾るとバランスよくまとまります。

      花がうまくまとまらないときは、あえてひとつの花瓶にまとめるのではなく、バランスをみながら別々の花瓶に分けて生けてもいいでしょう。いくつかの花瓶に分けて生けることで、お家の中のさまざまな場所で花を楽しめます。

      バラやカーネーション、ラナンキュラスなど、花が大きな花材を小さな花器に飾るときは、アイビーなどの葉もの(リーフ)を花瓶の根元に挿して、全体的に低くまとめるとまとまりがよくなります。少し高さを出したいときは、つぼみや線の細い花材を少し高い位置に加えてみましょう。

      花束の生け方

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      記念日やお祝いでプレゼントしてもらった花束、嬉しいけれど、自宅でどのように飾ればいいのか迷ってしまうことはありませんか?

      包装紙を外して、そのまま花瓶に飾ってもいいですが、よりきれいに長く切り花を楽しみたいのであれば飾り方にひと工夫をしましょう。

      花束をバラしてアレンジする場合は、一番高くしたい花を決めてからほかの花材をバランスよくカットしてアレンジし直すのがおすすめです。花束を生けるときの方法は以下の通り。花瓶に合わせてお花の魅力が出るよう、バランスを意識して飾ってみてくださいね。

      花瓶の高さに合わせ、そのまま飾る

      花束はお花屋さんがデザインしてくれたものを束ねているので、もらった花束の状態のまま飾っても問題ありません。

      ただし、飾る前には前述の下処理を行いましょう。まずは花束のラッピングを外し、花茎がまとめられている状態のまま水切りを行います。花材が水を吸い上げたら、花と花瓶のバランスが1:1になるように茎をカットしてくださいね。

      もらった花束の状態のまま飾るときは、できるだけ茎がしっかり水に浸かる大きめサイズの花瓶を用意するのがポイントです。

      同じ花だけをまとめて生ける

      花束を一度バラして、自分らしくアレンジしたいという方は、まずは同じ種類の花同士でまとめ直してみてはいかがでしょうか。同じ花だけをまとめれば、色や大きさのバランスに気を取られることがなく、初心者さんでも簡単に上手に生けられます。

      最初は簡単なアレンジから挑戦すると、感覚をつかみやすいのでおすすめです。

      小さな花瓶に分けて生ける

      ひとつの花瓶にまとめて飾るのではなく、いくつかの花瓶に分けて生けるのもアイディアのひとつです。小さな花瓶を並べると奥行きを演出できたり、数カ所に分けて飾ればさまざまな場所で楽しめますよ。

      キッチンやリビング、書斎などに分けて置けば、暮らしの中で常にお花に触れあう機会を増やせます。

      小さな花瓶はわざわざ購入しなくても、ジャムやスパイスの小瓶、グラスなどでも代用できます。身近にあるものを活用して気軽に生けられるのもメリットですね。

      花がうまくまとまらない時はどうする?

      花束を生けるとき、花束がうまくまとまらなくて困ったときは、「花留め」を使うといいでしょう。花留めは、普段の生活で使う道具で問題ありません。セロテープや、輪ゴム、麻ひも、ワイヤーなど身近にあるものを使って、自分の理想のバランスで花をまとめ、茎を固定します。

      花と花瓶の高さが合わないときは、花束を包んでいる透明なセロファンや、ビー玉などを用いて底上げするのもおすすめです。上手に使いこなせば、季節感の演出にも使えますよ。

      こまめに切り戻しながら、花を長く楽しもう

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      切り花は、こまめに切り戻すことで花を長く楽しめます。水切りを繰り返すと徐々に花が短くなっていきますが、花の長さに応じて花器を変えることで、さまざまな花の表情を見ることができますよ。

      背の低い小さな花瓶に飾る

      切り戻しを繰り返して、花が15cmくらいの長さになったら、花丈に合わせて花瓶を小さくし、小さな器に小分けにして楽しむのがおすすめです。

      大きな花瓶はスペースがないと飾れませんが、小さな花瓶やグラスを使えば、お仕事スペースのデスクや窓辺などにもお花を添えられますよ。

      花だけになっても楽しめる!

      茎がかなり短くなり花首だけが残っても、小ぶりなカップやグラス、浅めのお皿などを利用すれば最後まで花を楽しめます。器に水を張って花を浮かべるように飾れば、涼やかで可愛らしいアレンジメントになりますよ。

      まとめ:こまめにお手入れしながら、花のある生活を長く楽しもう

      今回は、基本の花の生け方や、切り花を長く楽しむための知識を中心にご紹介しました。お花屋さんで見つけた素敵な花や、思いのこもった花束はできるだけ長く楽しみたいですよね。お花を長く楽しむコツや、上手な生け方を参考にして、花のある暮らしをぜひ楽しんでくださいね。

        スタッフ画像

      監修:大越 真布由(おおこし まふゆ)

      グリーンアドバイザー/フラワー装飾技能士

      株式会社メルシーフラワー加工部主任。主にパックの花束加工業務およびご注文花束・アレンジメントの制作、また、人気の限定花束「デザイナーズブーケ」のプロデュースも手掛けています。

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